第32回東京国際映画祭、6番目、最後に観賞したのは、
「コンペティション」部門に出品のイラン映画

「ジャスト 6.5」。

11月4日(月)16:20~
TOHOシネマズ六本木ヒルズ・スクリーン2にて。

映画

「ジャスト 6.5」・・・
原題: Metri Shesh Va Nim
英題: Just 6.5
監督: サイード・ルスタイ
脚本: サイード・ルスタイ
音楽: ペイマン・ヤズダニアン
撮影: フマン・ベーマネシュ
編集: バーラム・デーガン
美術: モーセン・ナスロラヒ
録音: イラジュ・シャーザディ
キャスト: ペイマン・モアディ、ナヴィド・モハマドザデー、ファルハド・アスラニ他
製作国: イラン
言語: ペルシャ語
製作年: 2019年
上映時間: 134分
今年のヴェネチア映画祭でプレミア上映されていたので、
今回はアジアン・プレミア。
イランの作品。
劇中で刑事が「麻薬中毒者は100万人から650万人に増えた」というセリフがあって、
これが映画のタイトルの「ジャスト 6.5」の由来。
警察と麻薬組織との闘い。
スピード感が凄い。
そして非常に娯楽性に優れた作品。
コンペティション部門ということで、観客賞の投票用紙は最高点を付けて提出。

結局この作品は、今回の第32回東京国際映画祭において、
サイード・ルスタイが「最優秀監督賞」を受賞し、
ナヴィド・モハマドザデーが「最優秀男優賞」を受賞ということで、
見事2冠を達成

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上映後はQ&A。

登壇者は、サイード・ルスタイ監督とナヴィド・モハマドザデー。

司会:
「桁外れの作品を日本のコンペで紹介させて下さり、本当に光栄」
ルスタイ監督:
「自分のこの作品をエンジョイできますようにお祈りしていました」
ナヴィド・モハマドザデー:
「この美しい日本、そして本当に礼儀正しい日本の皆さんにお会いできて嬉しい。
この2~3日は本当にエンジョイした。日本に来る夢が叶って嬉しい」
観客:
「ジャポネという売人が出て来たり、ヤクザの様に自害したという話があったり、
最後は絞首刑ということで日本にもそういう制度があるので、
日本の観客にとっては、凄く映画に入り込むことが出来た。
日本を絡ませたということにどういう意図があったのか?」
ルスタイ監督:
「一番最初に脚本を書いていた時、
あるキャラクターが登場していて、彼が日本から帰って来て日本に興味があって、
日本との仕事をしていて、ヤクザの話もしているというキャラクターはいたが、
それは一番最初のドラフトの話なので、
その次のドラフトではそのキャラクター自体は無くなった。
その役者の顔がとても日本人っぽかった」
観客:
「麻薬の工場を爆破した後に、一生懸命弟のことを呼んでいた時に、
カラスが鳴いたが、あれは本物か?それともSEか?」
ルスタイ監督:
「それは後から足した音。爆発のシーンは後からCGで結構直したりした」
観客:
「イランでは逮捕された人がどんどんたくさん牢屋に入ってきたりとか、
死刑の人が複数人いっぺんに死刑になる様な状況というのは、
映画としてのお話なのか?現実としてのお話なのか?
また、何故その様に描いたのか?」
ルスタイ監督:
「大勢を捕まえて、大勢をいっぺんに死刑にするというのは無いかもしれない。
色々な地域で例えば麻薬売買で捕まった人達は、一人一人の裁判が長引いたり、
すぐに結論が出たり、色々あり、ただたまたま死刑執行の日が一緒になると
その何人かの死刑が一緒になることはあるが、
それは一緒にグループとして捕まった人達ではなく、
たまたま色々な地域で捕まった人達が一緒になって死刑が行われることはある。
これはリサーチの上、この様な感じかと理解した」
司会:
「凄く圧迫感のある撮影だったと想像するが、どのシーンが一番大変だった?」
ナヴィド・モハマドザデー:
「圧迫感については、皆大勢で一つの大きな部屋に入って、
場所が無いのでトイレの中で電話で話しをしていて、
そこで自分の元の恋人が自分の名前を出してしまったとか、それでイライラして、
ホースで皆に水をかけるシーンがあるが、
それは本当に気持ち的にはとても圧迫感を感じて、苦しかった。
そしてもう一つ、物理的に圧迫感を感じたのは、
監獄でどんどんたくさん人が増えて来て押されて、物理的に圧迫感を感じた。
一緒にエキストラとして入っていた人達は、普通の素人で、
自分達をコントロール出来なかった人達だったので、結構押されてきた。
大勢の素人が出ているので、監督がOKを出しても、
後でモニターを見ていると、誰かがじっとカメラを見ていたりとか、
仕方なくまたリピートすると、また同じ様にやらないといけないので、
素人が失敗してしまうと、何度も苦しいシーンを撮り直したりしていた」

観客:
「収容所に大量に人が収監された場面。私達は女性だから服を脱がないと言った人達。
その人達はトランスジェンダー男性かなと思ったが、それに対しての考えは?
また、収容所のとても劣悪な環境。そこの場面は現実を反映しているのか?」
ルスタイ監督:
「トランスジェンダーではない。
私はとても現実的な映画をいつも撮りたいと思っている。
前の作品もこの作品も現実に基づいて撮りたいと思っている。
但しこれは映画である。自分にとって一番大切なものは物語とフォーム。
そのフォームと物語だけには、
ドキュメンタリーにも現実にも負けない様な考えを持っているので、
手を入れてしまう。
自分が大切にしている物語とフォームを考えた時、
現実からちょっと離れても良いと思っている」
観客:
「ナヴィドさん演じる麻薬王について。悪役なのに魅力的に描かれている。
主人公の刑事よりもキャラクターが描かれている。
監督は特別な思いで麻薬王を描いたのか?
そしてナヴィドさんはどの様に役作りをしたか?」
ナヴィド・モハマドザデー:
「私は映画を観ると悪役派になってしまう。
描き方にもよるが、悪役を白黒ではなくグレイで描いてしまえば、
我々が映画を観る時、悪役を好きになってしまうことがある。
この悪役は一人の人間で家族を愛している。勿論悪いこともしてしまう。
家族を崇拝している凄い人間である。
私は役者として自分が演じてる役を後から観て、
弁護できる様な役をいつもやりたいと思う。
例えばもしいつかヒトラーの役をやることになった場合、ヒトラーを好きになるかもしれない」
ルスタイ監督:
「僕は作らないけど(笑)」
ルスタイ監督:
「麻薬王ナセルを見てシンパシーを感じること。
これを書く時、撮る時、皆が映画を観た時ナセルへの気持ちが動くような撮り方をしたいと思った。
もうひとつ音楽について説明したい。音楽家が音楽を作る時、誰の為に作るのか?
と聞かれた時、全てのシーンでナセルの為に作ってくれと言った。
自分が映画を観る時、完全な悪人は見たくない。
自分がナセルを描く時、普通の人間で私達の周りにもいるかもしれない人間を描きたかった」
観客:
「最終的にはイランの中でも麻薬を使う人が結局増えてしまってるということだが、
イランの人々を麻薬に駆り立ててしまう一番の社会問題はどういうものなのか?」
ルスタイ監督:
「色々リサーチしたが、イランだけでなく全世界で麻薬は増えてしまっている。
それでこの物語を作った。私は社会派の監督なので、
その時その時で社会問題になって疑問を持つものを映画にしている。
これから作る新作はまた自分が疑問を持っているものであるが、
今の作品や前の作品とは関係ない話となると思う」

みっきぃパパ

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