2月5日(日)、横浜の関内ホールで開催された第33回ヨコハマ映画祭。
最後の上映は、園子温監督作品

「冷たい熱帯魚」。

17時55分からの上映予定だったが、30分遅れの18時25分からの上映。

「冷たい熱帯魚」は、第33回ヨコハマ映画祭・ベストテン第2位、
そして第85回(2011年)キネマ旬報・ベストテン第3位と、
非常に高い評価を受けた作品。
ベストテン第1位で作品賞を受賞した

「大鹿村騒動記」とは僅かの得票差だった。
また個人賞として、
園子温が監督賞、でんでんさんが助演男優賞、
そして黒沢あすかさんと神楽坂恵さんが助演女優賞を受賞している。
20年程前に埼玉県熊谷市周辺で起きた「埼玉愛犬家連続殺人事件」をモチーフにした作品であるが、
映画では、実際の事件の加害者の犬のブリーダー夫婦を熱帯魚店経営の夫婦と設定し、
この猟奇的殺人事件をリアルに描いたサスペンスドラマである。
陽気な笑顔の裏に潜む残忍さ、そして真面目で冷静な顔の裏の狂気・・・。
人物描写が極めて繊細で、刻々と変化する心情など、卓越した作品である。

「
ヒミズ」、

「
愛のむきだし」と並び、さすが園監督だと改めて感心。
ただし、猟奇的な犯罪シーンの描写がリアル過ぎて、スクリーンを凝視できないシーンが多数。
R18+指定となっているが、成人でも精神的にショックを受ける観客も多いかもしれない。
決して観ていて気持ちの良い作品ではない。
また、上映終了後の後味も悪い。
しかし、演出、脚本、演技、音楽、撮影・・・何をとっても完璧である。
一見平和なこの世の中に潜む「死」とは・・・?「暴力」とは・・・?
映画

「冷たい熱帯魚」・・・
監督:園子温さん
脚本:園子温さん、高橋ヨシキさん
出演:吹越満さん、でんでんさん、黒沢あすかさん、神楽坂恵さん、梶原ひかりさん、三浦誠己さん他
上映時間:146分
ストーリー・・・
静岡県で小さな熱帯魚店を営む中年男性・社本(しゃもと)(吹越満さん)。
数年前に亡くした前妻との間に生まれた長女(梶原ひかりさん)と、
再婚した若い妻(神楽坂恵さん)と3人暮らし。
長女と継母の関係は完全に冷え切っており、
長女の素行不良にも社本は何も言うことができない。
隠れて煙草を吸う妻にも社本は何も言えず見て見ぬふりを続ける。
そんなある夜、長女がスーパーで万引き。
社本夫妻はスーパーの店長から呼び出しを受ける。
しかし、店長の友人の村田(でんでんさん)の仲介により、
長女は警察沙汰になることを逃れることができる。
陽気で気さくな村田は、社本と同じく熱帯魚店を経営する同業者であった。
村田は、スーパーから解放された社本一家を自分の経営する店へと招待する。
村田の店は社本の店より遥かに規模が大きかった。
急激に社本一家に接近する村田と若く妖艶な村田の妻(黒沢あすかさん)。
自らの意思をなかなか表現できない社本は、村田夫妻のペースに完全に飲み込まれていってしまう。
長女の万引き事件をきっかけに偶然出会った2人。
煮え切らない性格の社本と陽気で気さくな村田・・・。
この出会いにより、社本は破滅への道を突き進んでいく・・・。
・・・・・
今は自分も一人の子供の親となったが、やはり登場人物に自分自身を重ねて観てしまう。
助演女優賞を獲得した女優陣の演技力は間違いないが、助演男優賞のでんでんさんがまた素晴らしい。
陽気さで気さくな表の顔と、残忍で冷酷な裏の顔。
巧みな脚本と繊細な演出に際立った演技力が加わり、作品を盛り上げてくれる。
更に主演の吹越満さんも素晴らしい演技力だが、
ヤクザ役で登場する三浦誠己さんさんの凄味のある演技も非常に良かった。
三浦誠己さん、映画

「
海炭市叙景」に続く名演技である。
リアルな犯罪シーンの描写が多いので、「お勧め!」とまで言えないのが残念だが、
非常に完成度の高い作品であることは間違いない。
・・・・・

「冷たい熱帯魚」上映終了後、実行委員長のコメントがあったが、
「イヤな映画である。賛否両論あると思うが、その中にも何かを感じるものがあったはず。
それを園監督も狙っていると思う」
と述べる。
そして、「現在公開中の園監督最新作

「
ヒミズ」は素晴らしい」と個人的に絶賛。

更に映画のデジタル化についてのコメント。
「今年上映した3作品は全て35mmのプリントだったが、現在映画のデジタル化が進んでいる。
来年以降、上映作品がデジタルになってしまうと、関内ホールでは開催できなくなる」
時代の変化を改めて考えさせてくれる興味深いコメントである。
20時55分、第33回ヨコハマ映画祭の全てのイベントが終了。
みっきぃパパ

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